溶連菌(ようれんきん、Streptococcus)は、グラム陽性球菌の一群で、特に人間に感染することが多いのはA群溶血性レンサ球菌(Group A Streptococcus, GAS)です。この菌は、さまざまな感染症の原因となり、健康に影響を与えることがあります。以下に、溶連菌の特徴、感染症、症状、治療法について詳しく説明します。
溶連菌の特徴
- 分類と特徴:
- 溶連菌は、グラム陽性球菌で、連鎖状に配列することが多いです。A群溶血性レンサ球菌(GAS)は、溶連菌の中で最も一般的な病原菌です。
- 血液寒天培地で培養すると、赤血球を溶かす性質があり、これが「溶血性」という名前の由来です。
- 病原性:
- GASは、さまざまな毒素や酵素を産生し、組織破壊や炎症反応を引き起こします。
溶連菌による感染症
- 咽頭炎(咽頭扁桃炎):
- 喉の痛み、発熱、扁桃の腫れと赤み、膿の形成などが見られます。一般に「溶連菌感染症」と言われる場合、これを指すことが多いです。
- 猩紅熱(しょうこうねつ):
- 咽頭炎に加えて、皮膚に赤い発疹が出現し、典型的には舌が赤く腫れる(ストロベリータング)症状があります。
- 皮膚感染症:
- 丹毒(たんどく):皮膚の表面が赤く腫れ、熱感を伴う感染症です。
- 蜂窩織炎(ほうかしきえん):皮下組織の感染症で、腫れと痛みが伴います。
- 侵襲性感染症:
- 壊死性筋膜炎:筋膜に感染し、急速に進行する重篤な感染症です。
- 毒素性ショック症候群:多臓器不全を引き起こす非常に重篤な状態です。
- 続発性疾患:
- リウマチ熱:溶連菌感染後に起こることがある全身性の炎症性疾患で、心臓、関節、皮膚、神経系に影響を与えます。
- 急性糸球体腎炎:溶連菌感染後に腎臓のフィルター(糸球体)が炎症を起こし、血尿や浮腫などの症状を引き起こします。
溶連菌感染の症状
- 咽頭炎:
- 喉の痛み、発熱、頭痛、全身倦怠感、扁桃の腫れと赤み、膿の形成。
- 猩紅熱:
- 発熱、喉の痛み、体の発疹、ストロベリータング、顔の紅潮。
- 皮膚感染症:
- 発赤、腫れ、痛み、熱感、時には膿の排出。
- 侵襲性感染症:
- 高熱、激しい痛み、全身の倦怠感、ショック症状(低血圧、意識障害など)。
溶連菌感染の治療法
- 抗生物質治療:
- ペニシリン系抗生物質(例えばペニシリンV、アモキシシリン)が第一選択となります。ペニシリンアレルギーのある人には、マクロライド系(例えばエリスロマイシン)やクリンダマイシンが使われます。
- 対症療法:
- 発熱や痛みを緩和するための解熱鎮痛剤(例えばアセトアミノフェン、イブプロフェン)が使われます。
- 十分な水分摂取と休養も重要です。
- 重症例の治療:
- 侵襲性感染症や合併症がある場合は、入院しての治療が必要です。抗生物質の静脈投与や外科的処置が行われることがあります。
予防と対策
- 感染対策:
- 手洗いやうがいを徹底し、感染を防ぎます。
- 咳やくしゃみをする際には、口と鼻を覆うことで飛沫感染を防ぎます。
- 早期診断と治療:
- 喉の痛みや発熱が続く場合は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
まとめ
溶連菌は、咽頭炎や皮膚感染症などを引き起こす一般的な病原菌であり、適切な治療を受ければ通常は短期間で回復します。しかし、侵襲性感染症や合併症を引き起こすこともあるため、早期の診断と治療が重要です。日常的な感染対策と健康管理を徹底することで、溶連菌感染を予防することが可能です。
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