・神経再生の能力は、中枢神経系と末梢神経系で異なる。
末梢神経系の再生
末梢神経線維の再生は、次のようなステップで進行する
1.神経線維の損傷部位より末梢側は興奮しなくなり、断端から末梢側に向かって、軸索・髄鞘の断片
化が起こる。軸索末端部の方向へ進展する変性進展様式を順行性変性(ワーラー変性:wallerian
degeneration)という。
2.損傷部位において、炎症反応が起こり、血管の拡張、免疫細胞が集まる。マクロファージは浸潤
し、断片化した細胞片を貪食する。
3.シュワン細胞は、分裂し、軸索の経路に沿って細胞索を形成する。
4.シュワン細胞は、軸索の再生を促す成長因子を出し、軸索は傷害部位に伸び出していき、シュワン細胞で包まれる。
中枢神経系の再生
末梢神経は再生能力が高く、比較的迅速に修復される場合があるが、中枢神経系(Central Nervous System、CNS)の再生は通常、他の組織や器官と比較して修復能力は極めて限られる。一般的に、CNSの再生は次のいくつかのプロセスによって起こる:
- シナプスの再構築: シナプスは神経細胞同士をつなぐ接続点であり、情報伝達の重要な部分となる。CNSの再生では、損傷したシナプスが再構築されることがある。
- 軸索再生: ニューロンの軸索が損傷した場合、その再生が可能な場合があるが、再生された軸索が正常な機能を回復することは非常に稀。
- 神経幹細胞による神経再生: 神経幹細胞は特殊な種類の細胞であり、神経細胞やグリア細胞などの神経系細胞に分化する能力を持っている。一部の研究では、神経幹細胞を用いた治療法がCNSの再生を促進する可能性が示唆されているが、まだ実用化されていない。
- グリア細胞の役割: グリア細胞はCNSにおいて、神経細胞の保護や、代謝を調節するなどサポート役となっている。一部の研究では、グリア細胞がCNSの損傷後に神経再生を促進する可能性が示唆されている。
- 神経可塑性: CNSの神経可塑性は、経験や学習によってニューロン間の結合が変化する能力を指す。このプロセスはCNSの再生において重要な要素であり、損傷を受けた部位が他の部位によって機能を補うことがある。
これらのプロセスは、CNSの損傷後に部分的な回復を促進する可能性がありますが、完全な再生をもたらすことは非常に難しい。現在、神経再生を促進するさまざまな治療法が研究されているが、その多くは実用化には至っていない。
まとめ
☑️抹消神経においては、損傷しても再生能力がある。
☑️中枢神経系においては、再生能力が非常に限られる。
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