神経組織について

・人体において理解を深めるには、器官系>器官>組織>細胞という体系を理解する必要がある。神経
  系において置き換えると、神経系>脳・脊髄・末梢神経>神経組織>神経細胞と理解を進めていく 
  ことで理解しやすい。ここでは、神経組織についてまとめてみる。
・神経系は、内分泌系とともに、何らかの化学物質を介して、標的細胞や器官に情報を伝達し、ほかの
 器官系を制御している。
・神経系の反応は瞬時(2〜3㎜秒以内)に出現するが、効果は即座に消滅する。

神経組織は、神経細胞nerve cell(ニューロンneuron)グリア細胞glial cellからなる。
(神経細胞については、http://kennkouninagaiki.com/神経細胞について/を参照)
ここでは、グリア細胞について詳しく述べる。

・グリア細胞は、神経系の一部を構成する非神経細胞で、主に神経組織のサポートや保護を担当する。
・神経細胞(ニューロン)が神経信号の伝達を担うのに対し、グリア細胞は神経組織の構造的な支持や 
 代謝的なサポートなどを行う。
・グリア細胞は、脳や脊髄などの中枢神経系や末梢神経系のあらゆる部位で見られ、ニューロンより多 
 く神経組織の約半分の容積を占める。
・グリア細胞は、ニューロンの細胞体より小型で分裂能がある。
・中枢神経系と末梢神経系では、グリア細胞の数が異なるため、微細構造が大きく異なる。

1.中枢神経系のグリア細胞
 中枢神経系には、4種類のグリア細胞があり、細胞の大きさや特徴により区別される。

 a. アストロサイト(星状膠細胞:astrocyte)

  ・アストロサイトは、中枢神経系で最も大きく数が多いグリア細胞。細長い細胞突起を有し、ニュ
   ーロンや毛細血管を覆うことで、周囲の組織間液に露出しないように保護する。
  ・主な機能:①血液脳関門blood-brain barrierの維持
        ②三次元的枠組みの構成
        ③障害された神経組織の修復
        ④ニューロンの発生誘導
        ⑤間質液の調節
        ⑥神経伝達物質の吸収、再利用

 b.オリゴデンドロサイト(希突起膠細胞:oligodendrocyte)

  ・オリゴデンドロサイトは、アストロサイトと同様、細長い細胞突起を有する。その突起の先端で
   は、細胞膜が扁平に広がり、主にリン脂質からなる多層の被膜で髄鞘myelin sheathと呼ばれ
   る。
  ・髄鞘は、絶縁物質で、活動電位の伝導速度を速める(跳躍伝導)。
  ・このように髄鞘で取り巻かれた神経線維を有髄神経線維myelinated nerve fiberという。

 c.ミクログリア(小膠細胞:microglia)

  ・グリア細胞の中で、最も小さく、グリア細胞の約5%を占める。
  ・神経組織内を移動して、細胞の破片、不要産物、病原体などを取り込む。

 d .上衣細胞(ependymall cell)

  ・脳室や中心管の内面を覆っている。
  ・脳脊髄液cerebrospinal fluidの組成をモニターする受容器として働く。
  ・脳脊髄液の量や組成の調整、電解質バランスの維持などを行う。

2.末梢神経系のグリア細胞
 ・末梢神経系では、ニューロンの細胞体は神経節ganglionに存在する。
 ・軸索は、束になって結合組織で包まれており、末梢神経線維peripheralnerveとなる。
 ・中枢神経系と同様に、ニューロンの細胞体と軸索はグリア細胞の突起で包まれて、周囲と隔離され 
  ている。

 a.シュワン細胞(schwann cell)
 ・シュワン細胞は、ニューロンの軸索を被う。
  ・1個のシュワン細胞は約1㎜の長さで1本の軸索に巻き付いて髄鞘を形成する。
   (↔️中枢神経系のオリゴデンドロサイトは、数本の軸索に巻き付いて髄鞘を形成する)
  ・無髄神経線維では、1個のシュワン細胞が数本の軸索を取り囲んでいる。

  b.衛星細胞(satellite cell)
  ・末梢の神経節にあるニューロンと細胞体を取り囲むグリア細胞。

☑️神経組織は、神経細胞とグリア細胞からなる。

☑️神経細胞が情報伝達を担い、グリア細胞は、構造的な支持や代謝的なサポートを担う。

☑️中枢神経系のグリア細胞には、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリア、上衣細胞などがある。

☑️末梢神経系のグリア細胞には、シュワン細胞や衛星細胞などがある。


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